胃がんリスク検診
胃がんリスク検診(ABC検診)とは?
胃がんリスク検診(ABC検診)は「ヘリコバクター・ピロリ菌感染の有無を調べる検査」と「胃炎の有無を調べる検査」を組み合わせて、胃がんになりやすいか否かをリスク分類するものです。
胃がんには胃の粘膜に住み着くピロリ菌が深くかかわっています。ピロリに感染して胃粘膜の萎縮(加齢・老化現象)が進むほど、胃がんが発生しやすくなります。
胃粘膜の萎縮の程度はペプシノゲンという、消化酵素ペプシンの素を測定すること(ペプシノゲン法)でわかり、血液中のペプシノゲンの濃度が基準値以下の人は、6~9倍胃がんになりやすいことがわかっています。
胃がんリスク検診(ABC検診)はピロリ菌感染の有無と、血清ペプシノゲン値によって測定する胃粘膜の萎縮度によって、胃がんになりやすいかどうかのリスク(危険度)を判定する、新しい検診法です。
判定方法
胃がんリスク検診は、A、B、C、Dの4段階及びEで判定します。A群はピロリ菌の感染がなく、胃粘膜の萎縮のない群で、胃がんが発生するリスクはほとんどありません。
Bは、ピロリ菌の感染がありますが、ペプシノゲン値が基準値以上(陰性)で胃粘膜の萎縮が進んでいない群であり、胃がん発生率は年率0.1%程度です。
C群は、ピロリ菌の感染があり、ペプシノゲ値が基準値以下(陽性)で萎縮の進んだ群です。年率0.2%程度の胃癌の発生率です。
D群は、胃粘膜の萎縮が進んで、ピロリ菌が住めなくなった胃粘膜の状態です。ピロリ菌抗体が陰性で、ペプシノゲンは陽性となり、胃がん発生率は年率1.25%です。
A群→B群→C群→D群の順に胃がんになるリスクが高まっていきます。
ポイント① 判定結果と胃内視鏡検査
胃がんリスク検診(ABC検診)で大切なことは、医師と相談し、内視鏡検査受診を将来も継続していくことです。
ピロリ菌とは?
ピロリ菌は胃粘膜に潜むらせん状の桿菌で、胃酸を中和するウレアーゼという酵素を出すことで、胃の中に生息しています。現在のところピロリ菌は人間の胃の中にしか存在しないことがわかっています。ピロリ菌の感染経路は水系感染と考えられていますが、感染は幼少期に起こり、慢性的に持続し、やがて胃粘膜の炎症を起こし、慢性萎縮性胃炎と呼ばれる胃粘膜が薄く、萎縮した状態になっていきます。
ポイント② 胃がんの発症へのピロリ菌の影響
ピロリ菌の除菌方法
ピロリ菌は薬で退治することができます。プロトンポンプインヒビターという胃酸を抑える薬と、2種類の抗生物質(クラリスロマイシンとアモキシシリンなど)を1週間飲むことでピロリ菌を除菌できます。この治療法の成功率は70~80%です。
1回目の除菌療法(一次除菌)が不成功だった場合、抗生物質の種類を変えて再び除菌(二次除菌)を行うことで、95%程度の方は除菌できます。ピロリ菌を除菌することで、胃・十二指腸潰瘍の再発が抑制されるほか、胃のリンパ腫の一種であるMALTリンパ腫、胃の過形成ポリープが治療できます。また血液の病気である突発性血小板減少性紫斑病、鉄欠乏性貧血も改善することがわかっています。