高濃度ビタミンC点滴療法

キレーション治療の歴史

ビタミンCはビタミンB群と並んで水溶性ビタミンの一つであります。ほとんどの動物はアスコルビン酸を体内で合成できますが、ヒトはそれができないため、必要量をすべて食事などから摂取する必要があります。例えば、ヤギは沢山のビタミンCを体内で作ることができます興味深いことに病気になったヤギは通常の約6倍以上ものビタミンCを体内で合成すると言われています。体内でビタミンCを合成できないのは、モルモットやオオコウモリ、ヒトを含む霊長類の一部などだけなのです。

ビタミンCは抗酸化作用を有することから、古くから美容や風邪の予防にたくさん摂取するようにすすめられてきました。水溶性ビタミンですので、仮に沢山摂取しても過剰症を起こすことは少なく速やかに尿中に排泄されます。また、コラーゲンの生成を促進し歯茎の健康を保ったり、血管壁を強くしたり、怪我の回復を早めたりする作用があります。正常な体内では0.5-2.0mg/dLくらいの血中濃度とされていますが、多めに摂取することで抗ウイルス作用、さらに大量(300mg/dL以上)に摂取することで抗癌作用も発揮すると言われています。

キレーション治療の効果

1) 活性酸素を捕捉する抗酸化作用で細胞のがん化を防ぐ
2) 抗ストレス作用を有する
3) 白血球やマクロファージの機能を高めて免疫機能増強する
4) 抗がん活性を有するインターフェロンの産生を促す
5) 薬物代謝に関わって発がん物質を解毒し、体外に排泄する
6) 胃がんの原因になるニトロソアミンの胃中での生成を防ぐ
7) ウィルスを不活性化する
8) 副腎に働きかけアドレナリンの分泌を促進し抗ストレスビタミンとして働きます。

2種類のEDTAキレーション

超高濃度ビタミンC療法は1974年に米国のライナス・C・ポーリング博士により提唱されました。ライナス・ポーリング博士は、化学結晶構造の研究で1954年にノーベル化学賞を、さらに原水爆反対運動の功績で1962年にノーベル平和賞をと、これまで2度のノーベル賞を授賞されている著名な化学者なのです。

70年代前半にキャメロンとポーリングの二人はビタミンCを静脈内に投与することでがん患者の生存率が延長することを発表し、このことは世界中で有名になりました。しかしながら当時の米国ではその学説は信用されず狂人扱いされたのです。1979年、1985年にかの有名なメイヨークリニックから反論の論文が発表されました。10gのビタミンCを経口投与してもがん患者の延命には変化がなかったという発表でした。このため30年間もの間ビタミンCの研究は日の目を見ませんでした。しかし、その後も二人は研究を続けていたのです。メイヨークリニックの研究は経口投与のデータだったのに対し、キャメロンとポーリングの研究は静脈投与であったという違いがあったのです。

ポーリング゙博士は1994年に93歳でこの世を去りましたが、その後ポーリング゙博士の理論を信じた一人の医師がいました。米国カンザス州のリオルダン医師です。彼は2004年にビタミンCの経口投与ではガン細胞を殺すのに十分な血中濃度まで上昇させることができないという論文発表を出しました。その後彼は超高濃度ビタミンC点滴療法を実践し多くの良好な結果を出しました。

2005年に米国・公的機関/国立衛生研究所(NIH)の科学者が「超高濃度ビタミンC点滴療法」の結果を追試験して、衝撃的発表をしました。それは『高濃度アスコルビン酸(ビタミンC)点滴は、がん細胞に対してだけ選択的に毒性として働く』という内容です。

この結果、ポーリング博士が約30年前に唱えた「ビタミンCは選択的にがん細胞を殺す」との理論が正しかったのであります。 現在アメリカで約1万人の医師が、日本では約100人の医師たちが「超高濃度ビタミンC点滴療法」を始めています。つまり、この超高濃度ビタミンC点滴療法は古くからあったにもかかわらず、日本ではまだ新しい治療法と言えます。特に一般のクリニックレベルで行える最先端のがん治療のひとつなのです。

EDTAキレーション治療に有効な疾患

ビタミンCは自分が酸化されることで強力な抗酸化作用を発揮しますが、その際に大量の過酸化水素が発生します。過酸化水素は強力な酸化物質です。血中に投与された時、正常な細胞は過酸化水素をカタラーゼという酵素によって中和できますが、がん細胞はこれを中和できず死んでしまうというのです。いろいろな濃度のビタミンCを入れた人血清培地で膵臓癌、大腸癌、悪性黒色腫、骨肉腫の4種類の悪性細胞を培養した結果、400mg/dL以上のビタミンC濃度では悪性細胞は生存できないという結果が出ました。これは超高濃度ビタミンC点滴療法が抗がん剤として働くことの根拠となるものです。

ビタミンCを血中でこの濃度に上昇させるには経口投与では不可能です。この350-400mg/dLという濃度がredox cyclingによる細胞レベルの過酸化を誘導することができます。過酸化水素は血管内ではカタラーゼにより水と酸素に分解されますが、血管外に出ると過酸化水素のままでいられるのです。さらに過酸化水素は正常細胞ではカタラーゼによって中和されますが、がん細胞にはカタラーゼがないため中和できません。これががんに対するビタミンCの抗がん作用なのです。つまりビタミンCの酸化促進効果はカタラーゼの欠損しているがん細胞は酸化され死んでしまうが、正常細胞には酸化による障害を与えない、つまり副作用がないことに繋がります。

治療の流れ

米国で実際に行われているリオルダン医師の推奨する方法にのっとって行います。初回受診時にがんの状態を把握するために採血、超音波検査、CT検査などを行います。可能であれば、治療効果の指標となるものを見つけ出します。その後は個人個人のがんの病状により異なりますが、一般的には1回目25g、2回目50g、3回目75g、4回目100gと段階的にビタミンCの血中濃度を上げていき、血中濃度ががん治療に最適になるまで量を調節していきます。一例として、一回の点滴総量500cc(ビタミンC100g)を、2時間かけて点滴いたします。点滴回数と頻度は、週に1~2回の点滴を行います。3ヶ月間でその効果を確認しビタミンCの量を調節していきます。超高濃度ビタミンC点滴療法はがん患者の病状に合わせて適切にビタミンCの量、点滴スピードを調整する必要があり効果的かつ安全に実施するもので、治療には点滴療法の深い知識が必要となります。